コラム

みどり動物病院 コラム

肥満のおはなし

こんにちは、動物看護士の比古矢と申します。今回は私からコラムを投稿いたします。

皆さま、常日頃から御自身のペットちゃん達へ並々ならぬ愛情を注がれていると思います。

それは、手作りのご飯を作ってあげたり、たくさん遊んであげたり、一緒に旅行に行ったり、豪華なお住まいを用意してあげたり……等々、愛情の形は十人十色でしょう。

どのような形であれ、飼い主様がペットちゃんを大事にしている証拠と言えるでしょう。

 

そんな愛情表現の中でペットちゃんの“体型”について、普段はどれほど気を配っていらっしゃいますか?

おいしい物をたくさん食べて、身も心も大らかになったワンちゃん・ネコちゃん……「コロコロしていて可愛い!」同感です。太っていても可愛いものは可愛いですね。

しかしながら、そんな愛情が、ペットちゃんの老後に暗雲を漂わせているかも?

さて今回のコラムですが“食”に関する「肥満」についてのお話しです。

ちなみに最後だけ読んでもらっても十分です。

 

肥満と言えば人間にも馴染み深い(?)言葉だと思いますが、もちろん動物にも当てはまります。

肥満とは“脂肪が過剰についている状態”を指します。ちなみによくいうメタボリックシンドロームは“内臓脂肪がよりついている状態”でして肥満とメタボはそれぞれ別の基準がありますが、同じ病気(=肥満症)の一つの判断基準とされています。

では肥満体型がペットちゃん達に及ぼす悪影響を、ちょっとだけ書いていきます。

 

1.運動量(関節)

肥満になると運動量が減る……なんとなくご想像がつくと思います。

胴体を持ち運ぶのは四本肢ですが、その胴体が太れば四本肢に掛かる負荷は当然増えますね。

とは言え、太っていても若い子は元気も筋肉もしっかりあるので活発に動き回っています。では歳を取ってきたら……?

歳を重ねると筋肉も関節も衰えてきます。活発性が減り、眠る時間が増え、運動量は自然と落ちます。でもそれは老化の一つなので、仕方のない事です。

ですがそれに肥満体型が加わると、重い体を動かすのが大変→あまり動かず→筋肉が落ち、更に動きが……。

そして、運動量が減れば消費カロリーも減るので、普段通りの食事量を与えていると更に太っていく事も考えられます。

もちろん、肥満による関節痛のリスクも増すので、その子の老後を考えると、体形・体重にもしっかり気を使ってあげた方がよいでしょう。

 

2.心臓

肥満が心臓に?と思われるかもしれませんが、肥満は心臓に悪影響を及ぼします。

心臓の中には空洞があり、そこには血液が溜まっています。それがドクン、と縮んだときに空洞内の血液が血管に流れ込む。この動きを繰り返して体中に血液を流しています。

普段、体を動かす為にはエネルギーと酸素が必要ですので筋肉等の細胞は血液からそれらを受け取ります。

これが肥満を伴うと、重い体を動かす為によりたくさんのエネルギーと酸素が必要ですので、心臓からもっとたくさんの血液を送ってもらわないと賄えなくなります。

ともなると、心臓は血液を送るためにより大きく、より早く動くようになり、その結果から高血圧の状態が生じます。

高血圧は続くと心臓と血管を悪くします。心臓が肥大したり、血管が硬くなったりと良い事はありません。

そんな状態でも若い間は心臓も頑張ってくれますが、年月を重ねるとその代償は大きくなっていきます。

ゆえに、肥満による心臓の悪影響は十分、気を付けなければならないでしょう。

「でも2kgのチワワが3kgに増えた所で、たかが1kgの差じゃないですか~」と思う方もいらっしゃるかもしれません。

その“小さな1kg”は数十キロある人間から見た数値であり、そのチワワにとっては体重が1.5倍に増えちゃった……と言う状況です。体重1.5倍で心臓の負担も1.5倍!という訳ではもちろんありえませんが、小さな動物達にとっては“大きな1kg”になります。

 

3.他には、ミニチュアダックスやコーギー等の胴が長い犬種は椎間板ヘルニアと言う腰の骨の病気を起こしやすくなったり、小型犬の子だと膝のお皿の骨が外れる病気が悪化したり、後ろ肢の骨と骨を繋いでいる靭帯が切れてしまったり……と言う手術が必要な病気を発症してしまう恐れもあります。

などなど、調べれば調べるほど細かい事が出てきます。

 

 

小型犬でも犬種によって体格も違いますし、同じ犬種でも小さめの体と大きめの体の子が居ますので、肥満肥満とうわ言のように繰り返してもピンと来ないと思います。

そこでオススメなのがボディコンディションスコア(BCS)。

これは外観で肥満か?痩せ型か?と言うのを大まかに判断できる指標です。

病院に連れてきて頂ければこちらで判断しますし、ご自宅でも簡単にできるので気になる方はチェックしてみて下さい。

また、食事による摂取カロリーにも要注意です。動物には一日で消費するカロリーがあります。それを超えるカロリーを摂取すると脂肪として蓄えられます。

もし先ほどのBCSで太っているかも?と思われたら、摂取カロリーを見直してみるとよいかもしれませんね。

病院に聞いて頂ければお答えしますし、今はインターネットでも計算できます。

その子の現状(例えば1歳未満の若い子、避妊・去勢手術を済ましている子等)によって同じ体重でも必要カロリーは増減するので、いちど計算してみるとよいかもしれません。

最後に、人間でもそうあるように、実は動物にも太りやすいor太りにくい体質があります。

食事量が間違ってなくても、たまに体重を測って、ご飯の量を調整してあげれば、なおグッドでしょう。

 

今回のコラムは以上です。

 

みどり動物病院 動物看護士 比古矢

2017.03.04
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