『 命ほど尊いものはない 』
命はお金では買えないと言うけれど・・・
動物は売買されていますよね。動物は、ペットとは、なんなのでしょう。
ペットショップなど動物販売業者にとっては高価な商品です。
でも飼い主さん達にとっては、一度購入した動物は物ではなく大切な家族の一員です。
同じ動物でも立場が異なると、商品にもなり家族にもなります。
たまに遭遇する不幸な出来事ですが、動物を購入してすぐにかなり重大な異常が判明することがあります。私たち獣医師は、言葉を選びながらも事実を包み隠さず伝えます。飼い主あるいは飼い主家族は大いに悩みます。購入元に事実を伝えて対応を先方と協議される場合が多いです。先方も販売した商品に重大な異常があった訳ですから誠実に対応されます。
多くの場合は、代替の商品(動物)と交換するという提案か解約返金という提案が一般的だと思います。
ここで双方の動物に対する考え方が大きく異なってきます。
飼い主にとっては、一度家族の一員として認めたものをそう簡単には購入品として考え方を切り替えて販売元の提案に応じきれないというケースが多々あります。その後の飼い主さんの選択はまちまちだと思います。そのまま引き続き飼い続けるケース、代替動物を選択されるケース、返金してもらい解約されるケース、どれもこれも心の中に小さなわだかまりが残ってしまう場合が多いです。
どの選択が良かったかなどは飼い主本人にしか分からない事でしょう。
ある飼い主さんは、もし異常のある動物を私たちが放棄すれば、この子はこの後どうなるのだろう、幸せに生きていけるのだろうかと心配されます。
また、この動物を家族の一員として飼い続けるという選択をした場合では、今後私たち家族にどんな困難が訪れるのだろうかと不安になります。
飼育を諦め解約された場合、ほんのわずかな動物との出会いがこんなにも心を苦しめるのだろうか、もうこんなつらい思いは二度としたくないと考えられる方もいらっしゃると思います。
私たち獣医師は様々な飼い主さんと動物との出会いを見続けてきました。
変わった言い方ですが、商品が家族の一員になる瞬間って何なんでしょう。
ある飼い主さんは言いました。『この子の目を覗き込んだ時に感じました。』
別の飼い主さんは『この子を抱えた時のぬくもりと舐められた感触です。』
皆さん色々です。
その瞬間、心の中に目には見えない絆ができるようです。
かけがえのない存在になった瞬間です。
この絆が他の物には代えられないモノなのかもしれませんね。