椎間板ヘルニア
椎間板ヘルニアとは、椎間板(脊椎を滑らかに曲げたり、背骨に加わる外力を吸収したりするクッション)が潰れて、内容物または椎間板自体が脊髄や神経を圧迫した状態です。
肥満、高齢、動きの激しい場合にはリスクが高まります。
椎間板ヘルニアは、犬の神経疾患で最も多い疾患です。
椎間板ヘルニアはその重症度によって5つのグレードに分けられます。
グレード I 疼痛のみで神経異常がない
グレード II 不全麻痺だが歩行可能 繰り返し起こる疼痛
グレード III 重度の不全麻痺(歩行、起立不可)
グレード IV 完全麻痺
グレード V a: 深部痛覚の無い完全麻痺 (<48hrs)
b: 深部痛覚の無い完全麻痺 (>48hrs)
椎間板ヘルニアはハンセンⅠ型と ハンセンⅡ型に分類されます。
ハンセンⅠ型椎間板ヘルニアとは、椎間板内の背側の線維輪に亀裂が生じ、その部分から内部の髄核が脱出して脊髄を圧迫するタイプの椎間板ヘルニアです。
ハンセンⅠ型ヘルニアの好発犬種は、ミニチュアダックスフント、ペキニーズ、トイ・プードル、コッカスパニエル、ウェルシュコーギー、シーズー などの軟骨異栄養性犬種と呼ばれる犬種です。
ハンセンⅡ型椎間板ヘルニアとは、加齢に伴い線維輪の内層が断裂し、その中に入り込んだ髄核が線維輪を押し上げることで、背側の線維輪が膨らみ、脊髄を圧迫するタイプの椎間板ヘルニアです。
ハンセンⅡ型ヘルニアの好発犬種は、柴犬、ジャーマンシェパード、ラブラドール・レトリーバー、ゴールデン・レトリバーなどの非軟骨異栄養犬種と呼ばれる犬種です。
ダックスフンド・コーギー・ビーグルでは、若くて痩せていても発症することがあります。
腰を丸めている、抱き上げたときにキャインと鳴く、震えて元気がない、寝床から出てこない、などがサインです。
後肢を引きずる、触ると咬みにくる、おしっこ・うんちが漏れる・出ない、などが起きた場合には重症化していると考えられます。
診断は、病変部の位置や程度を確定するためにCT検査・MRI検査を行います。
手術は、背骨の一部を削り、椎間板物質を取り除き、神経の圧迫を解除します。
手術後はリハビリテーションが重要となります。
術後数日目から、屈曲反射の誘発や屈伸運動を行い、硬直した筋肉をほぐしていきます。
また、術後10日目からはハイドロセラピーとしてプール内で屈伸運動を行います。
術後の経過に合わせて低出力レーザー療法、鍼治療、バランスディスク、バランスボール、トレッドミルなどのリハビリテーションも行います。
2010.05.28