動物たちの病気 症例集診療内容の一部紹介

動物たちの病気 症例集

メラノーマ(黒色腫)

メラノーマ(黒色腫)

 

メラニン色素を持つ細胞が腫瘍化したものです。良性、悪性ともに存在し、

部位は口腔内、皮膚、指趾、眼に発生しやすい傾向にあります。

 

<部位別の特徴>

口腔内メラノーマ

 

犬の口腔内悪性腫瘍としては最もよく見られるものであり、そのほとんど全てが悪性の挙動を示します。

 

症状

 

口腔内腫瘤による持続的な口臭、口からの出血、嚥下困難などを主訴とした来院が多く見られます。

 

 

皮膚のメラノーマ

 

皮膚に発生するメラノーマは成犬から高齢犬に多く発生し、頭部及び四肢に多く発生する傾向にあります。良性、悪性ともに存在しますが、悪性の皮膚メラノーマをより発生しやすい犬種はミニチュア及びスタンダード・シュナウザー、スコティッシュ・テリアとなっております。

 

症状

 

皮膚のメラノーマは目立たない黒い斑点から急速に成長する大きな腫瘤まで様々であり、色もメラニン欠乏性の無色、濃い茶色ないし灰色、あるいは黒色と多様です。

良性の皮膚メラノーマは通常直径0.5~2.0cmであり、濃く色素沈着しておりドーム状の形状で表面は滑らかな無毛を呈する傾向にあります。一方、悪性のものは通常大きく、皮膚表面では潰瘍を起こし、二次的に細菌感染を伴っていることがよくあります。

良性、悪性の具合は発生部位により著しく異なり、多くの皮膚メラノーマは良性であるが、爪の下部(爪床)のメラノーマは例外であり、高度に悪性化する可能性があります。趾間のメラノーマは通常良性のことが多いが、爪床部のメラノーマとの鑑別が重要となります。

 

 

眼のメラノーマ

 

眼の腫瘍としてメラノーマは最も多い腫瘍です。眼のメラノーマは主に高齢犬で発生し、犬種による差はないと判断されています。

 

症状

 

眼のメラノーマの受診理由の多くは腫瘤が確認できた場合や、緑内障、ぶどう膜炎、眼内出血などの眼の症状を最初の主訴としての来院が多く見られます。

 

腫瘍の診断

 

腫瘍の診断を行うためには基本的に腫瘍細胞を観察する必要があります。

細胞を採取するための方法として針吸引生検や切除生検が主に挙げられます。

針吸引生検は注射針で細胞を吸引し採材する方法で、患者への負担は比較的少ないですが、得られる細胞が少ないことが欠点になります。そのため細胞が採取できていても診断がつかない場合もよくあります。一方、切除生検は手術などで腫瘍ごと、あるいは部分的に切除することで細胞ではなく組織として腫瘍を観察できるため病理診断の精度が高いことが特徴です。しかし、患者への負担が大きくなることが欠点でもありますが、腫瘍の基本的な治療が外科手術である場合には、腫瘍が第一に疑われた時点で手術を行い、術後の病理検査にて確定診断を行うケースも多々あります。

 

治療方法

 

 メラノーマの治療として第一選択に挙げられるのは手術による外科切除です。特に口腔内や爪床のメラノーマに関しては悪性度が非常に高いため、積極的な外科手術による広範囲の切除が必要になるケースがあります。眼におけるメラノーマは通常良性であるため、腫瘍の境界が明瞭で小さいものであれば経過観察が可能な場合もあります。しかし、腫瘍が大きく成長する場合には眼球摘出による手術が必要になってきます。

手術以外の補助療法としては抗がん剤による化学療法や放射線療法などもあります。放射線療法に関しては手術が不可能なほど大きく成長した腫瘍に対しては単独で行う場合もありますが、基本的には外科手術を行なった後に追加でこれらの補助療法を行うケースの方が効果が見込めるとされております。

また、メラノーマの特性上、気付きにくい場所に発生したり診断自体が困難な症例も存在します。さらに悪性のメラノーマは転移することも多々あり、外科手術やその他補助療法を行った場合でも腫瘍による悪影響を抑えられない症例も多く存在するのが現状であります。

 

少しでもこれら悪性腫瘍の影響を軽減させるためには日頃からの些細な変化をできるだけ見落とさずに診断し、治療に早く移行できるかが鍵となっております。

上記に挙げた症状や思い浮かぶ違和感がありましたら、早めの診察をお願い致します。

 

2019.02.28