整形外科診療内容の一部紹介

膝蓋骨脱臼

膝蓋骨脱臼とは、膝蓋骨(膝のお皿)が滑車溝と呼ばれる溝から外れてしまう病気です。トイ種(トイ・プードル、パピヨン、チワワ、ポメラニアンなど)に多くみられます。

先天性であることが多く、治療には手術が必要です。

突然キャンといって足をあげる、時々足が突っ張っている、スキップをするなどの症状が認められる場合には早期の診察をお勧めします。

レントゲン検査所見

  • トイプードル 3ヶ月 重度(グレードⅣ)

手術

以下に示した方法を組み合わせて整復を行います。

  • 滑車溝の造溝
    膝蓋骨が乗っている溝を深くする
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  • 脛骨粗面の転位
    大腿骨と脛骨をつなぐ靭帯が付着している脛骨粗面を切り離し、 外側へ移してピンで固定する
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  • 関節外固定法
    種子骨・脛骨粗面を締結し、足を外転させる
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  • 関節包の縫縮
    伸びた関節包を切り取り縫い縮める

骨折

最近では、トイ種(トイ・プードル、パピヨン、チワワなど)が落下や転倒の際に骨折する例が多くみられます。骨折の整復には、骨折位置、飼育環境、性格、年齢などによって、以下の3つの方法を用います。最近小型犬で落下の際によく認められる、前肢先端(橈骨・尺骨)の骨折を例にとって説明します。

プレートおよびスクリューによる固定

様々な形状のプレート(板)とスクリュー(ネジ)。
金属製プレートを骨折した骨にあてて、スクリューで固定します。

  • トイ・プードル、11ヶ月齢  Synthes社Veterinary Cutable Plateを二枚重ねて使用

ピンによる固定

骨髄内にピンを挿入し、その後キャスティング(ギプス)による固定を行ないます。

  • パピヨン、4歳齢  1.0mm Kirschner wire使用

創外固定

骨折を整復後、皮膚の外から骨に向かってピンを数本刺し、それを特殊な固定器を用いて線状(リニア型)、または円状(サーキュラー型)につなぎ、固定します。

  • トイ・プードル、1 1カ月齢
    1.2mm径ミニチュアハーフピンを使用したタイプ Ⅰb型創外固定

  • ネコ 5歳齢
    1.0mm Kirschner wireとミニチュアサーキュラーを用いた創外固定

椎間板ヘルニア

椎間板ヘルニアとは、椎間板(脊椎を滑らかに曲げたり、背骨に加わる外力を吸収したりするクッション)が潰れて、内容物または椎間板自体が脊髄や神経を圧迫した状態です。

肥満、高齢、動きの激しい場合にはリスクが高まります。ダックス・コーギー・ビーグルなどでは、若くて痩せていても発症することがあります。

腰を丸めている、抱き上げたときにキャインと鳴く、震えて元気がない、寝床から出てこない、などがサインです。後肢を引きずる、触ると咬みにくる、おしっこ・うんちが漏れる・出ない、などが起きた場合には重症化していると考えられます。

診断は、病変部の位置や程度を確定するためにCT検査及びMRI検査を行います。手術は、背骨の一部を削り、椎間板物質を取り除き、神経の圧迫を解除します。

  • CT検査結果

    椎間板物質が脊髄を圧迫している。

  • 手術

    圧迫を除去し、露出させた脊髄

術後はリハビリテーションが重要となります。術後数日目から、屈曲反射の誘発や屈伸運動などを行い、硬直した筋肉をほぐしていきます。

また、術後10日目からはハイドロセラピーとしてプール内で屈伸運動などを行います。

術後の経過に合わせて低出力レーザー療法、鍼治療、バランスディスク、バランスボール、トレッドミルなどのリハビリテーションも行います。