犬において皮膚に比較的よく見られる良性腫瘍の一つになります。特徴的な外観かつ変化の激しい腫瘍なので、発見しやすい部類の腫瘍ではないかと思われます。この腫瘍は無治療で消失する可能性のある病変ではありますが、類似した腫瘍の中にいくつかの悪性腫瘍が存在しており、鑑別がとても重要な腫瘍でもあります。
形態は一般的には比較的急速に増大する孤立性の境界明瞭な紅色半球状の膨隆病変として確認され、好発部位は頭部、耳介、四肢の皮膚となっております。
好発犬種にはボクサー、ダックスフンド、コッカースパニエル、グレート・デーン、シェットランドシープドッグ、ブル・テリア、などがあげられますが、その他の犬種においても観察される可能性は十分にあります。
診断方法としては病理組織検査が必要になるため針を刺して細胞を採取する方法(FNA)か、手術にて病変自体を切除し、観察を行う必要があります。
また、臨床症状を伴っている場合や、皮膚組織球腫が疑われるが全身性に同様の腫瘍ができた場合、体内の臓器や骨格などにも腫瘍病変が確認された症例では悪性腫瘍の可能性が高くなってくるため、FNA及び全身検査が必要になってくることもあります。
鑑別疾患としては肥満細胞腫、反応性組織球症、形質細胞腫、悪性黒色腫、組織球性肉腫といった名称の腫瘍があげられます。これらの皮膚組織球腫と外観は似ているが、腫瘍化している細胞が異なる場合や、腫瘍化している細胞は同系列の細胞だが全く病態が異なる腫瘍の場合もあるので、鑑別がとても重要になります。治療法も抗がん剤が必要となるケースや、予後不良の病態も存在するため、疑わしい症例や難治性の症例に関しては注意が必要になります。
鑑別診断の結果に本病態が疑われた場合には、自然退縮が認められることがあるため、経過観察を行います。自然退縮する場合は大体3ヶ月前後で退縮することが多いので、その間は病変を観察し、退縮しない場合には手術にて切除を考慮していきます。病理検査の結果が皮膚組織球腫であった場合には予後は良好となります。