コラム

みどり動物病院 コラム

どう思いますか?(院長より)

【出来事】

2016年デンマークのコペンハーゲン動物園で2歳のオスのキリン『マリウス』を事前に一般市民に情報公開した後、射殺し、子どもを含む多くの一般市民の前で公開解剖をして、その後ライオンやトラ、ホッキョクグマのエサとして食べさせた。この動物園の行為に関して賛否両論が沸き起こった。

 

【動物園側の主張】コペンハーゲン動物園 科学ディレクターBengt Holst氏の説明

キリンを群れで飼育する場合、近親交配を防ぐために群れの中でオスは1頭しか飼育できない。

その為余剰な個体を処分する必要がある。

動物園では繁殖は必要な事だが子供の性別は選択できない。メスは引き取り手が多いがオスは少ない。

動物園での余剰動物の飼育には、経済的な問題、飼育スペースの問題がある。

公開解剖は学術的である。

動物の死体を餌として供するのは、野生本来の姿である。

 

欧州動物園水族館協会は、コペンハーゲン動物園の殺処分を近親交配防止の立場から容認した。一方、殺処分前にイギリス、オランダ、ケベックの動物園から引取りのオファーが来た。27000通の嘆願書が世界から来た。しかし、遺伝的な問題で殺処分は行われた。各動物愛護団体からは多くの抗議が寄せられた。

 

【考察】

動物園側の説明は論理的には理解できます。しかし人間は感情をあわせ持っています。キリンの子供の誕生を喜び、『マリウス』と名付け、大切に育ててきたはずです。その動物を殺処分後に公開で解体し、餌にして他の動物に食べさせたという行為は納得できるものではありません。

動物園側が遺伝的問題・個体数の管理の問題を科学的に説明すればするほど、動物園という場所がいかに不自然で、人工的に野生動物を見世物として扱っている場所かということを認識させられます。

Holst氏の説明では、動物園でキリンの肉をライオンに与えるのは自然と説明したが、一般市民はその考え方には同意できないのではないかと考えます。学者が動物を解剖することは普通の事ですが一般市民にとって動物園は研究室ではありません。

マリウスは何のために生まれてきたのでしょうか?

言うまでもなく“動物園”というビジネスのためです。

動物園は珍しい動物を見たい・かわいい赤ちゃん動物を見たいという一般市民の要求に応えなければ採算が取れず存在・維持していくことが難しくなります。そのため不完全な繁殖計画・殺処分計画を実施しなければなりません。

コペンハーゲン動物園では、毎年20~30頭の動物を間引いて飼育動物の餌にしています。

2003年のCAPS(the Captive Animal's Protection Society)の調査では、ヨーロッパの動物園で7,500~20,000頭の動物が余っていることが判明しています。

 

日本で同様のことが起こった場合、その行為は容認されるのでしょうか?

 

2017.03.10
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