巨大食道症
巨大食道症は、食道が拡張し、運動性が低下する疾患です。先天性と後天性に発生し、後天性は更に特発性と二次性に分類されます。
巨大食道症の症状としては、吐出が認められることが多いです。吐出とは、食物が胃に流入する前に逆流して吐き出され、未消化物を努力なしに吐くのが特徴となります。
巨大食道症の診断は、単純X線検査もしくは造影X線検査で食道の拡張を証明することで行います。また、巨大食道症では、誤嚥性肺炎を続発し亡くなることが多いため、身体検査にて呼吸状態、X線検査にて肺炎像を評価する必要があります。
巨大食道症は、原因疾患を治療することにより食道の虚脱が改善することがあるため、原因疾患の鑑別が重要です。
先天性巨大食道症は、1歳齢までに診断されることが多く、原因は明らかにされておらず、ミニチュアシュナウザーやシャー・ペイ、ワイヤー・フォックス・テリアでは遺伝病であることが報告されています。
後天性二次性巨大食道症の原因疾患には、重症筋無力症、多発性筋炎、全身性エリテマトーデス、副腎皮質機能低下症、甲状腺機能低下症、神経疾患、胸腺腫、中毒などがあり、すべて除外された場合に、後天性特発性巨大食道症と診断され、後天性特発性巨大食道症は巨大食道症の大半を占めると考えられています。
原因疾患の治療を行っても巨大食道症が改善しない後天性二次性巨大食道症や先天性巨大食道症、特発性巨大食道症の場合の治療・方法としては、食事療法が重要となります。
立位での食事後15〜30分程度立位を維持し、食道内に残留している食べ物を胃に移動させる。食事の形態は、流動食や缶詰食をミートボール状にしたり、患者が食べやすく、吐出しにくいものにする。こういった食事療法を実施しても吐出などの症状が改善しない場合は、胃瘻チューブ設置を考慮する必要があります。
巨大食道症の経過および予後としては、先天性巨大食道症の場合、24〜46%が自然に回復すると報告されています。また、後天性二次性巨大食道症の場合は、原因疾患によっては改善する可能性がある。後天性特発性巨大食道症の場合は一般的に予後は悪いとされています。
しかし、食事管理や誤嚥性肺炎のケアをすることによって、長期的な生存を可能にすることも期待できるため、管理を徹底することが重要である。
2019.08.29