肥満細胞腫は猫の皮膚腫瘍では2番目に多い腫瘍と言われています。

主に皮膚と内臓に発生し、発生頻度はほぼ同じくらいです。猫の場合皮膚の肥満細胞腫は頭頸部、内臓の肥満細胞腫は脾臓と消化管に発生することが多いです。

皮膚の肥満細胞腫・・・比較的緩やかな経過を辿ることが多く、単独の腫瘍なら外科手術で取り切れば良好な予後が得られます。

脾臓の肥満細胞腫・・・脾臓を摘出することで比較的長期の生存期間が得られます。

消化管の肥満細胞腫・・・一般的に他の部位に発生した肥満細胞腫と違ってかなり予後が悪いです。

肥満細胞腫では腫瘍細胞に含まれるヒスタミン、ヘパリンなどにより様々な障害が起こります。主に胃十二指腸潰瘍や血圧低下、嘔吐、ダリエ徴候（腫瘍周囲の浮腫、赤み）などがあります。

診断

肥満細胞腫の診断にはFNA（針吸引生検）が最も簡単です。しかし、中にはこれでは診断がつかない場合がありその場合はコア生検（組織の一部を切除する）が必要になります。

治療

犬と同様猫の肥満細胞腫も外科手術と放射線療法による局所治療が大事ですが、状況により化学療法が必要になることもあります。

猫の肥満細胞腫では、消化管の肥満細胞腫を除けば多くの場合は外科手術のみで良好な経過をたどります。しかし、外科手術と放射線療法を行なってもコントロールできない、もしくはそれらの処置ができない場合には化学療法が行われることもあります。

猫の肥満細胞腫に対しての化学療法についての報告は少ないのですが、ロムスチンが効く可能性が示唆されています。　また、現時点では緩和的治療としてプレドニゾロン（抗がん剤ではありません。）を用いることが多いです。

また犬と同様に分子標的薬（腫瘍細胞をピンポイントで攻撃するため、通常の抗がん剤よりも全身への副作用が少ないと言われています）が使われることもあります。

このように猫の肥満細胞腫は発生する場所により予後が大きくかわり寿命に関わってきます。もし、体表にできものができたり、嘔吐下痢などの消化器症状、皮膚の赤みなど、なにか日常で気になる変化があれば気軽にご相談ください。