動物たちの病気 症例集診療内容の一部紹介

動物たちの病気 症例集

橈骨尺骨骨折




前腕とは、前足の肘から手首の間の部分のことで、橈骨と尺骨という2本の骨で構成されています。

橈骨・尺骨の骨折は犬でも猫でも認められますが、特に小型犬・超小型犬などでは最も起こりやすい骨折です。犬種で言うと、イタリアン・グレイハウンド、トイ・プードル、チワワ、ポメラニアンなどに多いようです。

 

飼い主さんが抱きかかえている時に落下してしまい、骨折してしまうケースが多いように思います。小型犬・超小型犬では50㎝ほどの高さからの落下でも骨折してしまうこともあるので注意が必要です。

 

橈骨・尺骨の両方の骨折が同時に起こることがほとんどですが、それぞれ単独に骨折が起こることもあります。

 

ギブスでしばらく固定しておくだけで治るケースもありますが、整復手術が必要になる場合がほとんどです。

 

特に手首に近い部分での骨折では、少しの骨折片のズレが前肢の変形につながってしまい、歩き方にも影響を及ぼしてしまうので、適切な整復手術が必要となります。

 

犬や猫の橈骨・尺骨は周囲の組織(筋肉・脂肪など)が少なく、血液の流れが乏しい骨であるため、他の部位の骨折と比較して癒合不全(骨折が上手く治らないこと)が起こりやすいので、適切な治療が重要となります。

 

手術は骨プレートや髄内ピンを使って行われることがほとんどです。

 

術後は数週間ギブスもしくはロバート・ジョーンズ包帯を着けて、安静に過ごしてもらいます。多くの場合でケージレスト(室内ケージの中で安静に過ごしてもらうこと)をお願いしています。

 

発育期の骨には、骨の端に成長軟骨と呼ばれる成長をつかさどる軟骨層があります。

X線写真では、この部分が細い隙間として見え、成長板と呼ばれます。

 

軟骨は骨より弱いため、成長板は特に骨折しやすい部位です。

幼若齢の動物が外傷により成長板を骨折してしまうと、骨の成長が止まったり骨がねじれて成長したりすることがあります。

橈骨や尺骨の成長板を損傷した場合も同様なので、注意が必要です。

2020.03.24