動物たちの病気 症例集診療内容の一部紹介

動物たちの病気 症例集

犬糸状虫症:フィラリア症

犬糸状虫症は、蚊が媒介する犬糸状虫(Dirofilaria immitis)が肺動脈に寄生する寄生虫疾患である。近年、予防が広く行われるようになり、まれな疾患になりつつあるが、予防を行なっていないと感染する可能性がある。

 

本疾患は、寄生部位から肺循環障害を引き起こす。肺循環障害は、①肺動脈に寄生している虫体による物理的血流障害、②虫体による機械的刺激と虫体から放出される物質に反応して起こる肺動脈内膜の増殖、肺動脈内腔の狭小化、③死滅虫体による肺動脈塞栓、④虫体による肺実質の炎症により生じる。一般的に、肺動脈障害は徐々に悪化していくが、肺動脈に寄生していた虫体が突如心臓内に移動し、全身状態に影響を引き起こす場合もあり、こういった急性犬糸状虫症を大静脈症候群と言う。

 

大静脈症候群では、肺炎、血色素尿、発咳、呼吸困難、運動不耐性、低血圧などの重篤な症状が生じる。治療は、対症療法を実施し全身状態を改善させてから、虫体摘出手術を実施することになる。

 

慢性犬糸状虫症の症状は、大静脈症候群と同様であり、寄生虫体の数や罹患期間が増すに連れて症状が顕著になっていく。

 

診断方法としては、抗原検査、ミクロフィラリアの検出、心エコー検査にて虫体の描出が挙げられる。

 

治療は、重症度により異なり、プレドニゾロン、抗菌薬、犬糸状虫症予防薬を組み合わせた治療を選択し、心不全が認められる場合は心不全治療薬を併用する。

 

犬糸状虫症は、予防により防ぐことが可能な疾患である。蚊が出てくる季節に入る前に、フィラリア予防を行うことをお勧めします。


当院では、予防を始める前に抗原検査を実施し、フィラリアに感染していないことを確認してから予防を実施しています。抗原検査は、専用の検査キットが存在し、少量の血液を採取することで実施することが可能です。


当院のフィラリアの予防方法には、錠剤タイプの内服薬(1ヶ月に1回)、クッキータイプの内服薬(1ヶ月に1回)、注射(1年に1回)、ノミ・マダニ・フィラリアを同時に予防できるおやつタイプの内服薬(1ヶ月に1回)、皮膚に垂らすスポットタイプが存在します。その子にあった方法を相談して決めていく形になります。

2020.04.27