重症熱性血小板減少症候群
重症熱性血小板減少症候群(以下SFTS)は、マダニが媒介する人獣共通感染者で、ブニヤウイルス目フレボウイルス属に分類される新しいウイルス
Davie bandavirusが原因となる。SFTSウイルスは、様々な動物に感染し、マダニと野生動物の間でウイルスが維持されていると考えられている。これまでにSFTSウイルスに感染し、症状を発症することが確認されているのは、人、犬、猫、チーターのみである。
人のSFTSは、マダニの活動が活発になる春から秋に多く、6〜14日間の潜伏期間の後、発熱、頭痛、倦怠感、筋肉痛、下痢嘔吐が発現する。血液検査では血小板と白血球の減少が認められ、致死率は20〜30%と高く、特に高齢者が重症化しやすい傾向がある。
SFTSウイルスは、マダニが媒介する。マダニの間では介卵伝播や経発育期伝播するため、全ステージのマダニの吸血により人や動物に感染する。治療予防に関しては、マダニ対策が重要であり、動物から人への感染をいかに防ぐかが重要となる。
猫のSFTS
2017年から2021年3月までに猫328例のSFTS発生が確認されている。
【症状】
急性の食欲不振と活動性の低下、発熱、黄疸、嘔吐下痢
【血液検査】
血小板減少、白血球減少、ビリルビン上昇、CPK上昇、SAA上昇
【診断方法】
RT-PCR法によるSFTS遺伝子の検出およびELISA法による抗体検査
【経過】
致死率60%
現時点では特異的な治療法はなし(対症療法を行う)
死亡例では発症から7日以内に死亡する。
一方、回復症例は発症後7日目以降から徐々に改善していく。
犬のSFTS
猫に比較すると犬のSFTS発症例は少なく(2017年から2021年3月までに犬12例のSFTS発生が確認されている)、十分な情報が存在しない。
いずれにしても飼育動物のマダニ予防、特に猫では室内飼育を徹底することが重要になる。
2021.10.31