一方、私達が臨床的に遭遇する機会があるのは、後天性のファンコーニ症候群であり、犬がジャーキーを取りすぎたことで引き起こされたり、薬剤(ゲンタマイシンなど)の副作用で認められたりする。
ファンコーニ症候群の病態は近位尿細管の異常である。
腎臓には糸球体と尿細管という部分が存在する。
糸球体は、血液中の老廃物やミネラルを濾過し、尿を生成する。
糸球体で濾過された尿には、老廃物、アミノ酸やブドウ糖などの栄養素、ナトリウムやカリウムやリンや
マグネシウムなど様々なミネラルが含まれている。
尿細管は、糸球体で濾過された尿から体に必要な成分(アミノ酸やブドウ糖やミネラル)を再吸収する役割を担っています。
したがって、ファンコーニ症候群では、近位尿細管が障害を受け、ミネラルや重炭酸、ぶどう糖、アミノ酸が再吸収されず、遠位尿細管に到達してしまう。
遠位尿細管が、機能していれば再吸収をされ調節されるが、ブドウ糖とアミノ酸は遠位尿細管では再吸収されないため、尿中に出て行ってしまう。
そのため、ファンコーニ症候群では血糖値の上昇はないが、尿中に糖が認められる状態となります。
ファンコーニ症候群の臨床症状としては、一般的に多飲多尿が認められる場合が多い。
重症例では腎不全症状:元気低下、食欲低下、嘔吐、下痢といった症状が認められる。
治療としては、まずは原因の除去が必要となる。
薬剤の使用の有無、トリーツおやつの給与歴、またエチレングリコール中毒やレプトスピラ感染症から生じることもあるため、飼育環境を含めた問診をしっかりとる必要がある。
原因の除去を行なったあとに、腎障害の管理を行う必要がある。
脱水が認められる場合は、静脈内点滴を行い、電解質異常や代謝性アシドーシスに対しても血液ガス分析を行い積極的に補正する必要がある。
⬅血液ガス分析を行う検査機器
予後は、腎障害の程度により異なるが、原因が分かり、除去できる場合は、適切な支持療法を行えば予後良好であると考えられている。