動物たちの病気 症例集診療内容の一部紹介

動物たちの病気 症例集

三尖弁異形成

三尖弁異形成

 

三尖弁とは心臓の右心房と右心室の間にある逆流防止のための弁構造です。

この弁尖・腱索、乳頭筋の形態異常を呈する先天性異常が存在します。

三尖弁の接合不全が生じることにより多くの症例で三尖弁逆流が認められる。

三尖弁奇形は比較的珍しい先天的異常であるが、犬と猫どちらでも認められることがあります。(犬の先天的異常の3-7%)

犬においてはラブラドール・レトリーバー、ボクサー、ゴールデン・レトリーバー、アイリッシュ・セター、グレート・デーン、ジャーマン・シェパード・ドッグなどの大型犬に好発する傾向があります。

 

症状としては無徴候で若齢時に心雑音が聴取されて診断に至るケースが一般的ですが、中には腹水貯留などの右心不全徴候を呈して受診される場合もあります。程度によりますが、腹水貯留による消化管圧迫での食欲不振、下痢、嘔吐や横隔膜圧迫による呼吸困難などの症状を示す場合もあります。

 

確定診断を行うには心臓の超音波検査にて行いますが、心電図でも特徴的な波形を認められることもあり(splintered QRS群)、レントゲン検査でも異常を示唆する所見(逆Dサイン)が得られる可能性は高いため、これらの画像検査を含む心臓のチェックを行うことが大事になります。

治療には外科療法と内科療法がありますが、心臓の特に三尖弁異形成に対する外科療法は手術報告はあるものの、一般的な診療設備では実施不可能かつ明確な外科適応時期の判断が定まっていないこともあり、積極的な治療を行う場合には専門医療機関における精査が必要となります。

内科療法としては右心不全徴候が認められる場合には利尿剤、ACE阻害薬の組み合わせにより行われます。また、上述のような重度の腹水貯留を呈する症例においては腹腔穿刺や、胸腔穿刺により貯留水を抜く処置を行い対応しますが、基本的には緩和療法による治療内容となります。

2024.05.31