動物たちの病気 症例集診療内容の一部紹介

動物たちの病気 症例集

ブドウ、ユリがもたらす急性腎障害(AKI)

 腎臓には尿の産生、血圧調整、赤血球の成長因子産生のように、全身の血液量および酸素量を調整する働きがあり、これに機能障害が起きると血液、脳、心臓、消化器官など、あらゆる臓器に細胞レベルで強く影響します。

急性腎障害(AKI)では、正常な腎臓が何らかの障害を受け、明らかな症状のない機能障害をおこした状態に発し、それが進行して症状のある機能障害になり、さらに進行すれば腎不全となります。

その後は慢性腎臓病ステージ1~4のいずれかになるか、生命維持が困難となるケースがあります。また慢性腎臓病の場合にも、AKIに陥ることが知られています。

尿量の確認と血液検査によって、患者の腎不全のグレードを判断し、迅速な状態安定化と原因究明のために各種検査を行います。

元々、慢性腎臓病を抱えている高齢の患者をのぞき、正常であった犬猫の突発的なAKIの多くは、循環血液量の不足(心臓病、出血、低体温・熱中症、全身的な炎症、ホルモン病)による組織の低酸素症、中毒物質が原因であると考えられます。

 

なかでも日常で気を付けるべきは、外因性の中毒物質、猫でユリ、犬でブドウ・レーズン、その他には除草剤、重金属、薬剤などです。

猫のユリ

花(一噛みでも)>>花粉を含むそれ以外の部位 1~3時間で嘔吐などの症状が現れ、1~3日で急性腎障害(尿量の変化)を呈します。初期症状がいったん治ったように見えるので、見逃しにつながります。

犬のブドウ・レーズン

果肉、皮、種、搾りかすなどの全てで生じる。ブドウの中毒量は皮、実、ジュースでは20g/㎏、レーズンでは2.8g/kgからとされます。デラウェア150g/房、巨峰500g/房(小型犬にとっては一房が致死量)

6―12時間以内に嘔吐などが生じ、1~3日でAKIとなり、尿毒症を発症します。3日以内に輸液療法を行えば、回復の見込みはあるとされています。

いずれもAKIに陥って、乏尿、無尿、虚脱、高カルシウム、リン血症などが見られた場合、予後不良といわれています。

内因性の中毒物質は、高カルシウム血症、低カリウム血症などで、これらは健康診断で発覚する場合があります。

最後に腎臓がなぜほかの臓器と比べて傷害を受けやすいのか主な4つを述べます。

1.血液から適切な尿を作るために血液量が大量に集まり、有毒物質に暴露されやすい。

2.尿細管上皮細胞が有毒物質を一度取り込んでから尿へ放出するため、一時的または永久的に物質が留まる。

3.尿中には100倍濃縮された有毒物質が腎障害をおこす。

4.全身の低酸素状態にいち早く気づくために生理的に低酸素状態にある。またエリスロポエチンという赤血球を成長させる因子を産生するための大きなエネルギーが必要であり、機能障害が顕在化しやすい。

2026.01.30