動物たちの病気 症例集診療内容の一部紹介

動物たちの病気 症例集

猫の下部尿路徴候(FLUTS) ①特発性膀胱炎(FIC)

猫の下部尿路徴候(FLUTS)には、様々な原因が存在し、最も一般的な原因は特発性膀胱炎(FIC)である。

【猫の下部尿路徴候の原因】

  • 特発性膀胱炎(FIC)55%
  • 尿路感染症(UTI)18.9%
  • 尿道閉塞10.3%
  • 尿石症7%
  • 腫瘍3.6%
  • その他5%

 特発性膀胱炎の病態は複雑であり、膀胱だけの問題ではなく、外的要因と内的要因が関与していると考えられている。

 外的要因とは、環境のことでストレスが関与していると考えられており、飲水量が少なくなるドライフードのみの食生活やトイレが気に入らないなどが関係している。

 内的要因とは、膀胱のバリア機構の異常や、内分泌系や交感神経系の乱れが関係していると考えられている。

 

【特発性膀胱炎のリスクファクター】

環境要因

  • 多頭飼育
  • 食事内容の頻繁な変更
  • ドライフードのみ食事

猫の特徴

  • 肥満
  • 神経質な性格
  • 少ない水分摂取量
  • 活発に動かない

 

 特発性膀胱炎は、どんな年齢、品種、性別の猫でも発症するが、一般的には若〜中年齢での発生が多い。

 診断方法は、問診、身体検査、尿検査、画像検査(レントゲン検査、超音波検査)を行い、他の疾患を除外して行わなければならない。

 ほとんどの特発性膀胱炎は、治療を行わなくても数日〜数週間で臨床症状は改善するとされているが、中には難治性や再発を繰り返すものも存在する。

①環境の改善

②食事療法

③ストレス軽減サプリメント

④鎮痛薬

⑤抗うつ薬

などが治療方法としてあげられる。

 

 特発性特発性膀胱炎のみであれば、生命に関わるような状態になることはないが、膀胱内の炎症産物が尿道に詰まり尿道閉塞を引き起こし、急性腎障害を引き起こした場合は、非常に危険な状態に陥るため、愛猫の排泄を常に観察しておくことが重要である。

2022.03.30