副腎疾患(クッシング症候群とアジソン病)
副腎は、左右の腎臓の上にあり、重要なホルモンを分泌している臓器です。副腎のホルモンが過剰に出る疾患をクッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)、逆に不足する疾患をアジソン病(副腎皮質機能低下症)と呼び、犬でしばしば認められます(猫は稀)。
クッシング症候群は、副腎からコルチゾールなどのグルココルチコイドが過剰に分泌されることによって引き起こされる内分泌疾患です。クッシング症候群は発生機序により、①脳下垂体腫瘍により副腎皮質刺激ホルモンが過剰分泌されることが原因の下垂体依存性クッシング症候群(pituitary-dependent hyperadrenocorticism:PDH)、②副腎皮質の腫瘍による副腎腫瘍性クッシング症候群(adrenal tumor:AT)に分類されます。
クッシング症候群は、臨床症状と血液検査より診断します。症状は、過剰なグルココルチコイドの作用により、多飲多尿、多食、腹部膨満、脱毛、皮膚の菲薄化、パンティングなどを認めます。また、ホルモン検査としてACTH刺激試験を行い、コルチゾール値の上昇を確認し、血液検査では肝酵素の上昇や高コレステロール血症、血糖値の上昇などが認められます。また、副腎の大きさを腹部超音波検査にて確認することによりPDHとATを鑑別することもできます。
治療法としては、内科療法として抗ホルモン剤の投与を行います。また、PDHでは下垂体腫瘍により神経症状が現れている症例に放射線療法、ATでは副腎腫瘍摘出といった治療法も行われています。
一方、アジソン病は副腎皮質から分泌されるホルモンが不足することによって生じる疾患で、多くの症例で球状帯と束状帯という部分が破壊され、ミネラルコルチコイドとグルココルチコイドの両者が不足します。アジソン病は雌犬で好発し、ホルモン不足により虚弱、体重減少、食欲不振、嘔吐、下痢、徐脈、低体温、振戦などの症状が出ます。副腎の破壊はゆっくりと進行することが多いので、臨床症状も好不調の波を伴いながら進行していきます。副腎の機能がある程度以上失われてしまうと突然のショック(アジソンクリーゼ)を引き起こし、緊急治療の対象となります。
治療法としては、緊急治療では輸液療法を行いながらホルモン補充療法を行います。ショック状態が改善したら維持療法のホルモン補充療法に切り替えていきます。アジソン病の予後はよく、適切な維持療法が行われる限り、寿命を全うできるケースが多いです。
2019.02.02