会陰ヘルニア
会陰(えいん)とは外陰部と肛門の間のことを言います。
会陰ヘルニアとは、この部分の筋肉の隙間から、膀胱、前立腺、直腸、小腸など通常は腹腔内に存在する体の構造物が、腹腔内から飛び出てしまい、肛門周囲に大きな膨らみの様な物が形成されてしまう病態です。
会陰ヘルニアは、主に中~高齢の去勢手術を受けていないオスの犬に認められます。
猫やメスの犬では偶発的にみられる程度です。
好発犬種は、ボクサー、ボストンテリア、ペキニーズ、コリー、ダックスフンド、オールド・イングリッシュ・シープドッグなどで、テリア系の小型の雑種犬でも好発します。
劣性遺伝やホルモンの関与が原因に挙げられていますが、いまだに不明な部分が多い疾患です。
会陰ヘルニアは、筋肉の脆弱化により、骨盤隔壁が破綻することによって発生します。
症状としては便秘、下痢、嘔吐、排尿困難(しぶり)などが現れます。
肛門脇の片側もしくは両側の腫脹が認められます。
診断は、X線検査、超音波検査、直腸診によってヘルニア内の解剖学的構造を確認することによって行います。
膀胱がヘルニア嚢内に入り込んでしまった場合には、排尿が不可能となり、高窒素血症に陥ってしまい、重篤な症状を起こすこともある病気です。
その場合、迅速な治療が必要となります。
治療は基本的に外科的治療(手術)を行います。
会陰ヘルニアの外科的整復には多くの術式が存在します。
それぞれの患者さんの状態に応じて最も適切な術式を選択します。
当院で主に行う術式は、膀胱固定術、大腸固定術、外肛門括約筋や内閉鎖筋などの縫縮術です。
会陰部の筋肉群が縫合時の緊張に耐えられるほど強靭でない場合は、ポリプロピレンメッシュの設置が選択されます。
また、会陰ヘルニアを外科的に整復する際は、去勢手術を併せて行うことをお勧めします。
去勢手術を併せて行うことで、会陰ヘルニアの再発のリスクを3分の1に減少させ、さらに対側の会陰ヘルニアの発症を減少させるとする研究報告があります。
2017.05.31